老人ホームは用途地域の制限を受けるのか?

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用途地域という言葉は一般の人々にとってはそんなになじみのある言葉ではありません。しかしながら、土地活用をしている人なら知っている可能性は高いでしょう。建物を作るときにはさまざまな規制を受けます。用途地域はその中の1つです。

近年、用途地域について変更があり、老人ホームの建設は従来どおりできるのか話題になりました。この記事では、そのあたりについて広く紹介していきます。

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住居やお店などの建物は自由に建てることができません。さまざまな規制があります。その1つとして「用途地域」というものがあるのです。これはさまざまな用途の建物が無秩序に乱立することを防ぐためにあります。たとえば、この地域には住居だけしか建てられない、この地域には工場だけしか建てられないというように、エリアごとに建てられる建物の種類を制限しているのが用途地域というわけです。

その用途地域の種類はこれまでは12種類だったのですが、2018年に変更がありました。それによって「田園住居地域」が用途地域に追加になって全部で13種類になったのです。

このときにいろいろな変更があって老人ホームの建てられる地域に制限がかかるのではないかと注目されましたが、結果的にそのようなことはなく種類が増えただけに終わりました。用途地域は土地の価格を左右することもありますので、自分の土地を持っている人は、何か変更点があるときには注目しておいて損はありません。

規制というとデメリットだけを連想される人もいるかもしれませんが、用途地域があるおかげで住みやすかったり、働きやすい住環境になっていることも事実であり、そこには多くのメリットがあります。

用途地域には全部で13種類ありますが、ここではそれぞれについておおまかに紹介していきます。1つは第一種低層住居専用地域であり、2階建ての住宅、小中学校、老人ホームなどが建てられる地域に分類されています。

数多くある地域の中でもっとも住宅環境が優れているところになります。老人ホームには多くのお年寄りが生活をしますし、住宅にも多くの人が住んでいますし、小中学校にも多くの学生がそこで勉強をしています。住環境としてはもっとも尊重されるべきエリアですので、一定以上の規模の建物は建てられないことになっています。

たとえば、このエリアではコンビニの建設も認められません。もう1つは第二種低層住居専用地域であり、小規模なお店などを建てられることができる地域です。中規模以上の建物となると、第一種中高層住居専用地域や第二種中高層住居専用地域に限られてしまいます。

たとえば、2階までしかないスーパーならこのエリアで建てることは可能です。

それから、大規模なマンションや商業施設であれば第一種住居地域です。日本の中でもっとも指定面積が広いです。パチンコなどの大規模な商業施設の場合は第二種住居地域です。映画館や劇場の場合には準住居地域が該当地域にあたります。

近隣の住宅街の住民が利用できる商業施設の立地を認めているのは近隣商業地域です。住環境としてはにぎやかな感じがするでしょう。多くのビルが立ち並んでいる地域は商業地域に指定されていて、大規模な工場の立地は準工業地域、工業地域、工業専用地域であれば認められています。

ただし、工業専用地域では住宅を建てることが禁止されているただ1つの地域です。そのため、老人ホームも建てることはできません。最後に、新たに追加された田園住居地域ですが、これは簡単にいえば農業専用のエリアです。

2018年4月に新しく追加された用途地域の「田園住居地域」は、2022年の生産緑地問題を背景として追加されました。

1992年に生産緑地法が制定されたことで固定資産税などの税制上の優遇を都市農地を持っている人は受けることができたのですが、これはあくまでも期限がつけられていました。すなわち、2022年になるとその優遇がなくなるのです。

そうなると、その農地を所持していた人たちが一斉に売り出して宅地に転用されていくと大きな問題になりかねません。これが2022年の生産緑地問題です。こうした問題を受けて田園住居地域が設定されて、都市農地のある地域では開発規制がかかるようになりました。

たとえば、用途を農地以外のものに変更するときには市町村長の許可を得なければいけないといったことなどです。田園住居地域では当然ながら建築可能な建物が限られています。基本的には農業専用エリアですので、農家の人たちが住むための住宅は建築可能ですが、2階建てまでの家でなければいけません。

それ以外の建物は基本的には禁止されています。たとえば、娯楽施設、ホテル、事務所などは全面的に禁止です。お店に関しては理髪店や日用品を販売している小規模なお店などは可能です。学校に関しては、小中高の学校は可能ですが、大学は全面禁止になっています。

さらに、病院をはじめとする医療機関も建設不可能ですが、老人ホームに関しては無制限で建てることが認められています。

これまで用途地域について詳しく見てきましたが、老人ホームはどの地域だったら建設可能なのでしょうか。結論からいうと工業専用地域を除く12種類の用途地域で建てることができます。建物の高さや広さといった条件もありません。

基本的には無制限です。条件をつけるべきだという議論もありますが、これから高齢化が進んでいってますます老人ホームの需要は高まっていく傾向があります。そうした中で規制をかけてしまうと老人ホームを新しくつくることができないので、なるべく規制をかけないようにしようという動きがあるのです。

ただし、似たようなものとして老人保健センターに関しては事情が異なります。基本的には無制限に建てられますが、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域の3つに関しては条件付きでのみ建設可能になっています。

用途地域は建物をつくるときに大いに関係している規制の1つです。近年は新たな地域が設けられたりするなど変化もあります。土地を活用している人や土地を持っている人だけでなく、広く多くの人に注目されることが望ましい問題の1つです。

現状、老人ホームに関しては工業専用地域を除いて無制限に建てられるようになっています。

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