介護についてネットで調べたら、様々な用語が出てきて混乱したことはありませんか。私もそうでした。義母はずっと一人暮らしを続けていましたが、1年ほど前に要介護状態となり、一人暮らしが困難になりました。私たち夫婦は同居を勧めましたが、本人は「あんたたちに気を使わせたくないし、私も気を使うのは嫌」とのこと。
今回は、私が義母のために老人ホームや介護施設を調査、検討した流れを体験談として紹介します。
いざ調べ始めると、さっそく壁にぶち当たりました。用語の違いがよくわからないんです。例えば「老人ホーム」と「介護施設」は全く別物だというのがそれまでの私の認識でした。老人ホームは民間が運営しているもので、介護施設は公的機関が運営しているものだと単純に思い込んでいたんです。
ところが実際は違っていました。介護施設とは介護が受けられる施設全体を指すもので、一方、老人ホームとはその介護施設のあくまでひとつであり、高齢者を対象にした介護サービス全般が受けられる施設を指していました。
さらに調べていくと、老人ホームと言えば、通常は「有料老人ホーム」を指すことがわかってきました。
これは老人福祉法という法律できっちり規定されているそうです。簡単に言えば、介護、食事の提供、掃除や洗濯など日常で発生する家事、そして健康管理、この4つのサービスのうち少なくとも1つを行う、高齢者を入居させている施設が「有料老人ホーム」に当たります。
さらに、一口に老人ホームと言っても様々なタイプがあることがわかってきました。まずは「介護付き有料老人ホーム」です。安否確認をはじめ介護にまつわることは全部、施設のスタッフが面倒を見てくれます。しかもその施設によって受け入れ態勢はいろいろで、大きく介護専用型と混合型に区別されるそうです。
前者は介護保険で要介護認定を受けた人が対象で、後者は自立・要支援・要介護まで幅広い高齢者を受け入れてくれます。提供されるサービスも施設により様々のようです。生活支援サービスや介護サービスなど生活補助に重点を置いているところもあれば、その施設ならではの特色を持たせたところもあります。
リハビリや機能訓練を行ったり、レクリエーションやイベントを積極的に行うなどです。年に何度か外食に連れていってくれたり、お花見に出かけたりするところも多いようです。
これも「介護付き有料老人ホーム」と同様、自立・要支援・要介護のいずれの人も入居できるのですが、やはり施設によって対応はかなり分かれるそうです。
「自立の人はご遠慮ください」だったり、「要介護3以上の人を対象とさせていただきます」だったりです。ポイントは介護サービスが付随しないことで、これは「介護付き有料老人ホーム」とは大きく違う点です。では介護サービスを受けたい時はどうすればいいんでしょうか。
その場合は、入居者が訪問介護など外部の在宅サービスを個別に契約し、利用していくとのことです。施設内にいながらサービスを受けられる点では「介護付き有料老人ホーム」と変わらないので、心配はなさそうです。「介護付き有料老人ホーム」に入居した場合、サービスは全てその施設のスタッフが行いますが、「住宅型有料老人ホーム」の場合は外部のスタッフがやって来て行うことになります。
逆に言えば、自宅にいた時に来てもらっていたヘルパーさんに引き続きお世話してほしいと考えた場合、「住宅型有料老人ホーム」に入居すればそのヘルパーさんに変わらず来てもらえることができるので、大きなメリットと言えます。
これは食事など生活支援サービスを中心に提供する施設で、入居者は原則、自立した人が対象となります。施設によって様々ですが、温泉があったりスポーツジムがあったり、健康を維持するための設備が整っているようです。
基本的に介護が必要になった際は退所を迫られるため、それがデメリットと言えますが、ただ退所後のサポートを行うところもあるようです。例えば、同じ運営団体が「介護付き有料老人ホーム」を併設しており、そこへの入所を受け入れてくれるなどです。
今までのものとはネーミングの雰囲気が違いますが、これは認知症にかかっている人のための施設です。要支援2以上と認定された65歳以上の高齢者で、かつ認知症を発症していることが条件です。但し、住民票のある自治体に設けられた施設にしか入居できないそうです。
例えば、その施設が自宅からそう離れてなくても、住所が隣の市だった場合は入居はできないということですね。
これもネーミングの雰囲気が介護施設っぽくないのですが、最近どんどん増えてきているようです。厳密には老人ホームではありませんが、高齢者が安全かつ快適に暮らせるようバリアフリー構造の高齢者住宅として整備されている施設で、基本的に賃貸契約となります。
今のところ介護は必要ない、ある程度のことは自分でできる人には合うようですね。安否確認と生活相談がメインのサービスですが、利用者の希望や要介護度に合わせて、外部の介護サービスを利用できるそうです。このあたりは「住宅型有料老人ホーム」と少し似ている感じがしますね。
これまで見てきた介護施設は民間が運営主体です。民間はサービスなどいろいろな面で充実していますが、やはり気になるのはお金の問題。できれば自治体や社会福祉法人が運営している介護施設への入居したいという人も多いはず。
私も最初はそう考えました。でもこれらの施設への入居は民間よりもかなりハードルが高いです。例えば「特別養護老人ホーム」は要介護3以上でないと受け入れてもらえません。「介護老人保健施設」は要介護1からOKですが、在宅復帰を目指すのが主眼の施設なので、長期的な入居は見込めません。
しかも両方とも入居希望者が非常に多く、何十人、場合によっては何百人も入居待ちしていることも珍しくありません。残念ながら、申し込んでも実際に入居できるまで何年かかるかわかったものではないというのが、正直な感想です。
介護施設を利用するには、入居時に発生する入居一時金と、毎月必要になってくる月額費用の2つを負担しなければなりません。月額費用はさらに介護サービス費とその他の生活費に分けられます。生活費には食費やオムツ代、それに医療費も考えておかねばなりません。
やはり公的な介護施設は金銭面で負担が少なめとなっています。地域差もありますが、例えば「特別養護老人ホーム」の場合、月額費用は6万円~15万円程度とされています。入居一時金は0円です。介護保険が適用されるため、民間の有料老人ホームなどに比べれば比較的安い費用で生活することができるでしょう。
一方、民間の施設はピンからキリまでという状態です。例えば「介護付き有料老人ホーム」の場合、月額費用は15万円~35万円ぐらいとなります。入居一時金は取らないところもありますが、高級な施設であれば数千万円かかる場合もあります。
親の資産状況や、もらっている年金の額なども付き合わせて、しっかりと検討することが大切です。
さて、義母が結局どの施設に入居したかと言うと「住宅型有料老人ホーム」です。先ほど書いたように施設によって対応が分かれるので、パンフレットを取り寄せた上、いくつかの施設を本人とともに見学し、結果、この施設が今の義母の状態に一番合うと判断しました。
この先、介護度が高くなっても新たな介護サービスを自由に契約できることも決め手でした。今回の記事が介護施設について調べている方々の参考になれば幸いです。